介護施設経営の魅力とは?競争が少ない市場で成功する「3事業一体型」の考え方

介護施設経営というと、「土地や建物に多額の資金が必要」「人材確保が難しい」「簡単には始められない」といったイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。

確かに、介護施設の開設には大きな初期投資が必要です。しかし、経営者の視点で見ると、その参入障壁の高さこそが介護施設経営の大きな魅力になります。

さらに、小さな介護施設を安定して経営するためには、建物から得られる家賃収入だけで考えるのではなく、「介護施設」「訪問介護」「訪問看護」の3事業を一体で設計することが重要です。

本記事では、19床の小規模介護施設を実際に運営してきた経験をもとに、競争が比較的少ない介護施設市場の魅力と、持続的な収益を生み出す経営モデルについて解説します。

介護施設経営は競争が比較的少ない市場

介護施設経営の魅力の一つは、他の介護・医療サービスと比較して、新規参入が急激に増えにくいことです。

例えば、訪問看護ステーションは年間約2,500事業所が新たに開業している一方、介護施設の新規開設は年間約500施設程度とされ、開設数には約5倍の差があります。

この違いを生んでいる大きな理由が、介護施設特有の参入障壁です。

訪問型の事業は、事務所や一定数の人員を確保することで比較的小さく始められます。一方、介護施設では土地、建物、設備、人材、行政手続き、開業後の運転資金まで含めた総合的な準備が必要です。

誰でも簡単に参入できる事業ではないため、競合施設が短期間に急増しにくく、適切な地域選定と経営設計ができれば、長期的な事業基盤を築きやすい市場だと考えられます。

参入障壁の高さが長期的な競争力になる

私が2018年に横浜市で19床の介護施設を建設した際には、次のような投資が必要でした。

  • 土地取得:約1億円
  • 建物建設:約1億円
  • 開業後の運転資金:約5,000万円
  • 合計:約2億5,000万円

これは2018年当時の実績です。現在は資材費や人件費などの建築コストが上昇しているため、同規模の施設を新たに建設する場合、当時よりも大きな資金が必要になる可能性があります。

一見すると、この初期投資の大きさは大きなデメリットに見えます。

しかし、見方を変えれば、資金調達、事業計画、運営体制を整えられる事業者だけが参入できる市場であるということです。すでに土地や建物を保有している事業者や、介護・医療サービスの運営基盤を持っている法人にとっては、この参入障壁が競争優位性になります。

介護施設経営では、参入しやすさではなく、参入した後に長く運営を継続できる仕組みを構築できるかが重要です。

小さな介護施設は「3事業」で経営する

介護施設を建設して入居者から家賃を受け取るだけでは、大きな投資に対して十分な利益を残すことが難しい場合があります。

小さな介護施設経営を成功させるためには、次の3事業を一体で考える必要があります。

  1. 住宅型有料老人ホームなどの介護施設
  2. 訪問介護事業所
  3. 訪問看護ステーション

介護施設では、居室の家賃や管理費などを基盤となる収入として確保します。私が運営する19床の施設では、1部屋あたり約10万円の家賃収入を一つの基盤としています。

しかし、小規模な施設ほど、建物から得られる収入だけに依存する経営には限界があります。

そこで重要になるのが、入居者の生活を支える訪問介護と、医療的な支援を行う訪問看護です。私たちのモデルでは、訪問介護と訪問看護を合わせ、入居者1人あたり月50万円を超える売上を一つの目標としています。

19床の場合、単純計算では月間950万円を超える事業規模になります。

もちろん、実際の売上は入居者の要介護度、医療ニーズ、サービス利用量、人員配置などによって変動します。しかし、重要なのは、介護施設の収益を「家賃だけ」で計算しないことです。

建物、介護、看護を一体で設計し、利用者を継続的に支える仕組み全体から収益を生み出すことが、小さな介護施設経営の基本になります。

介護施設より先に訪問看護を立ち上げる

3事業を展開する際は、開業する順番も重要です。

私がおすすめしているのは、介護施設の完成を待つのではなく、訪問看護ステーションを先に立ち上げる方法です。

訪問看護を先行して開設すれば、地域の利用者を支援しながら運営実績を積み重ねられます。同時に、地域の医療機関、ケアマネジャー、介護事業者との関係も構築できます。

その後に介護施設を開設すれば、すでに訪問看護の運営体制や地域連携の基盤がある状態で、施設入居者へのサービス提供を始められます。

一方、訪問介護については、介護施設の開設と同時に開始する方法が現実的です。施設入居者へのサービス提供を中心にスタートすることで、利用者を一から集める負担を抑えながら事業を軌道に乗せやすくなります。

開業の順番を正しく設計することで、施設完成後の立ち上がりを早め、売上が安定するまでの期間を短縮できます。

最初から3事業すべてを自社運営する必要はない

介護施設、訪問介護、訪問看護の3事業が重要だからといって、開業時からすべてを自社で運営しなければならないわけではありません。

人材や管理体制が不足している段階では、地域の信頼できる訪問介護事業所や訪問看護ステーションと連携する方法もあります。

まずは外部事業者との連携によって安定したサービス提供体制をつくり、施設の入居率や職員数が安定した段階で、自社運営へ切り替えていくことも可能です。

経営では、最初から理想的な完成形を求めることよりも、資金と人材に無理のない持続可能な仕組みをつくることが大切です。

介護施設経営は2棟目から効率が高まる

介護施設経営では、1棟目で運営の基本となる仕組みを構築します。

具体的には、採用、教育、人材育成、請求、勤怠管理、品質管理、営業、地域連携などの業務です。これらの仕組みを1棟目で標準化できれば、2棟目や3棟目にも展開できます。

複数施設を運営することで、次のような経営効率の向上も期待できます。

  • 本部機能やバックオフィス業務の共有
  • 管理者や職員配置の最適化
  • 採用活動と教育体制の共通化
  • 備品や消耗品の一括購入
  • 営業活動や地域連携の効率化
  • 訪問介護・訪問看護の運営基盤の共有

1棟目では施設運営に必要な本部機能の負担が大きくなりますが、2棟目以降では既存の仕組みを再利用できます。

そのため、介護施設経営は、拠点を増やしながら運営効率と収益性を高めていく「積み上げ型の事業」といえます。

地域に根付いた後は居宅介護支援事業所も検討する

介護施設、訪問介護、訪問看護の3事業が安定した後は、居宅介護支援事業所の開設も選択肢になります。

ケアマネジャーが事業に加わることで、地域の利用者や医療機関、介護事業所との接点がさらに増えます。また、利用者のケアプラン作成から介護、看護、住まいまでを包括的に支援できる体制に近づきます。

ただし、居宅介護支援事業所を単なる集客窓口として考えるべきではありません。利用者本位の公正なケアマネジメントを前提として、地域全体の支援力を高める役割として設計することが重要です。

地域との信頼関係を積み重ねたうえで事業を拡張すれば、介護施設を中心とした持続可能な地域ケアの基盤を構築できます。

介護施設経営の本当の魅力は地域に残る資産をつくれること

私たちの経営モデルでは、介護施設事業で営業利益率約35%、訪問看護ステーションで約25%を維持し、施設オーナーとして月額約150万円の賃料収入を得ています。

これは、あくまで私たちが構築してきた経営モデルにおける実績であり、すべての施設で同じ利益率や収入を実現できるわけではありません。

それでも、施設の家賃収入だけに依存せず、介護、看護、地域連携を組み合わせることで、収益源を複数持つ強い事業構造をつくることは可能です。

介護施設経営の本当の魅力は、単に高い利益を得られることではありません。

参入障壁が高く、競争が比較的増えにくい市場で、地域に必要とされる住まいとサービスを長期的に提供できることにあります。適切に運営された介護施設は、地域住民の暮らしを支えながら、次の世代にも残せる事業資産になります。

小さな介護施設経営とは、建物を所有することでも、部屋を貸すことでもありません。

介護施設を中心に訪問介護と訪問看護が連携し、一人ひとりの利用者を継続して支える「仕組み」を経営することです。

これから介護施設経営を始める方は、建物の建設費や入居者数だけではなく、3事業をどのような順番で立ち上げ、どのように連携させるかまで設計してみてください。

その事業全体を設計する視点こそが、小さな介護施設を持続的に成長させ、競争が少ない市場で長く選ばれ続けるための第一歩になります。